先日ワールドワイドキッズに追加されたフォニックス教材のレビューをしたのですが、フォニックスというよりフォノロジカルアウェアネス(特にフォネミック・アフェアネス)に重点を置いている感じがしました。
・・・といったところでほとんどの人はなにそれ?状態だと思いますので、今回はそこについてまとめてみたいと思います。
ちなみにこの辺り昔はみんななんとなーくで習得したし、インプット量さえあればすっ飛ばしても勘でなんとかなったります。
しかし教える方としてはそんな根性論で今時やってられない。英語圏の学校でも英語以外の言語をルーツに持つ子達に英語を教えないといけないケースが増えたし、勘だよりではないもっと体系化した教え方が必要。というわけで今までは無意識下でやられてきたものをメソッドとして確立した教え方に変化したのでした。
外国語として英語を学んでいる日本人にも当然重要で、これからの英語教育現場にも浸透していくのではないかと思われます。
フォニックスの前にやっておかないといけないこと
フォニックス(Phonics)については過去にまとめてますので詳しくはそちらをご覧ください。
Phonicsについてのまとめーアナリティック・フォニックスとシンセティック・フォニックス
フォニックス自体は文字と音の対応規則を覚えて未知の単語が出てきても文字を読み書き出来るようにするものです。
ただしフォニックさえやれば読み書きOKというものでもなく、単語の意味のインプットの他文法などは当然学んでいかなければいけません。
アメリカ、イギリスなどで1970年代以降英語以外の言語を母国語にもつ子供たちの就学が増え、徐々にフォニックスの学習効果が注目されていくことになるのですがフォニックスをやっていてもフォローできない子たちも多くいました。
現在言語習得過程の研究がすすみ、フォニックスに先行してやった方がいいと導入されているのがフォノロジカル・アウェアネス(音韻認識)です。
また音韻よりさらに細かい認識であるフォネミック・アフェアネス(音素認識)はフォニックスと密接な関係にあります。
アメリカの場合小学校の前に1年義務教育であるKindergarten(幼稚園の年長相当)があり、それ以前をpre kindergartenと呼んでいます。フォノロジカル・アウェアネスはこのKinderおよびpre-kあたりからはじめ、フォニックス習得後もしばらく並行して小学校低学年くらいまで取り組むというような学習計画となっています。
フォノロジカルアウェアネス Phonological awareness(音韻認識)とは
英語に限らず全ての言語で実は言語理解の基礎として音韻認識をしているのですが、大抵の人は無意識でやっています。
とりあえず日本語で説明しますね。
例えばこんな音のつながりを聞いたとしましょう
どこで文章がきれるかわかりましたか?
平坦な文字の羅列だけでは難しいかもしれませんが、日本語の音韻認識が身についている人であれば話している時の音を聞けばどこで文章が切れるか、そして後の文が疑問形であること、どこからどこまでが一つの単語なのか助詞なのかなどが音の抑揚や間隔で判断ができます。
もし音韻認識が間違っていると
きょう/は/いい/てんき/です/し/ねおそと/に/あそび/に/いき/ません/か
「ねおそと」って何?とか「です/しね」えっ!?みたいな大変なことになってしまいます。
このように音韻認識によって文の区切り、単語の区切り、疑問形なのかなどなど色々な判断をしています。
そしてもし日本語で音韻認識がしっかりできていたとしても、英語は英語のための音韻認識が別途必要になってきます。
英語圏の教育現場ではフォニックスの学習前からこれらの音韻認識に取り組んでいくのですが、フォニックスを通じて字を読めるようになった後でも取り組まれるものでもあります。
フォネミック・アフェアネス phonemic awareness(音素認識)
音韻よりさらに細かく、単語の中に含まれる音素という最小単位を認識できるようにしていくことです。
「とうもろこし」のことを「とうもころし」といったりする小さい子供の言い間違いは可愛いですが、実はいい間違っているのではなく認識が未熟なゆえの認識(聞き)違いなのです。
子供が「とうもころし」といい間違をしていた場合「と・う・も・ろ・こ・し」と一つ一つの発音をさせてみますよね。これは音素とその並び順を認識させているわけです。
でも一つ一つは言えるのに、なぜか続けると「とうもころし」になってしまう。単語の中にどんな音が含まれているかという音素認識と、すべてをつなげたときの認識はまた別物なのですね。
この音素に関しても言語によって異なっているので英語を耳から学ぶ為には英語の音素を認識できるようにしておかないといけないわけです。
例えばratの場合r/a/t、fishはf/i/shと文字数はちがえどそれぞれ3音素で構成されています。
英語の音素は日本語より複雑です。
日本語ではrやt、f、shを聞きなれていませんから日本語話者にとって認識が難しい音となります。
含まれる音素が多くなればなるほど認識は難しくなっていきます。
音素は日常生活を送る中で無意識下でみにつけていくのですが、音素を並べて一覧にして短期集中型で覚えさせた方がよほど学習効率がいいですよね?
そして大抵音声だけでなく「じゃあついでにその音素に対応した文字も覚えてもらおうか」となるのでフォニックスとよく混同されることになるのですが、本来は文字がなくても音の認識をしっかりできるように耳を鍛えるのがフォネミック・アフェアネスであり英語圏では識字のためのとりくみをはじめる前から行われています。
どうやって教えるか?
英語圏の教育現場では英語の音韻認識のために歌とダンス、ライム、読み聞かせ、音読、暗唱などが行われています。
特にライムはフォニックスなどが出てくる以前からあったのがあらためてみなおされてスタンダードとして定着した感があります。
参考:rhyme押韻とは?頭韻(アリタレーション)、脚韻(ライミング)
幼少期には他に早口言葉、手遊び歌、一箇所だけ別の音素に置き換えて別の単語にしていくなどなどたくさんの言葉遊びを通して習得させる方法を取っていきます。
遊んでいるだけ、に見えてしっかり学習をさせているのです。
英語教育のために小さいうちからわざわざ留学させているような教育熱心な親御さんもいらっしゃるのに、その内容を学びの手法として分析したような記事にさっぱりお目にかからない。もちろん日々何をやってるか、預けている間のことは保護者は見てないからわからないのかもしれませんが、あと10年くらいしたら、本人(教育を受けた子供)たちが自分から情報発信するようになるかな?
まとめ
こんな感じで音の要素とどこでひとまとまりなのかという音韻を認識できてはじめて「聞ける」なのです。
そして文字を音に変換できて「読める」、認識した音を文字に変換することができると「書ける」になっていきます。
このあたりの研究が人間の音声会話を機械に認識させて処理させるということにもとても役立っています。
近年のテクノロジーの発達ともとても関係が深い分野。
海外の人たちは研究成果を教育に生かすのがほんと上手ですよね。
日本ではやっと学校教育でもフォニックスが認識されそうかなというところ。
まずはフォニックスに混じって(混同されて)Phonological awarenessも浸透していくんじゃないでしょうか。
単に英語を聞き流すだけでは効果がないという方もいますが、このあたりの理論をしっかり踏まえている教材であるならば英語の音韻認識が鍛えられて今まで聞き取れなかった英語が聞き取れるようになる(そして単語や文法の知識はあるので意味が分かる)というのは大いにあり得ることだと思います。
時代はどんどん進みますし、教育現場も変わっていきます。
最新情報を追いかけて常にアップデートしていく姿勢が親にも必要ですね。
参考にした本
10年ほど前の本なのですが、現在のところ日本語で書かれた本の中では一番簡単で子供たちがどういう遊びを通じてフォノロジカル・アウェアネスをしてるのかという例が豊富です。
と言うか今のところ他に出てなさそうなので、もっと詳細をとなった場合は洋書に当たることになると思います。
ういちゃん、1歳半からベネッセの子供向け英語教材ワールドワイドキッズ(WWK)でおうち英語を初めてもうすぐ4歳。 WWK…