先日Mother Goose(Nursery Rhymes)の重要性についての記事を書きました。
Mother Goose(Nursery Rhymes)の重要性
英語圏の基礎教養になっているので絶対に触れときましょうと述べたのですが、実はそれはほんのさわりでもう一つ大事な役目を担っていて本来はそちらが本命です。
今回はこのNursery RhymesのRhymeとはそもそも何かについて書きます。
この理解が英語習得には欠かせず、英語圏の学校ではかなりの時間を割いてrhymeに取り組むのです。
日本の学校教育の英語では今の所盛大にスルーされているのでほとんどの人が知らないままなのですが、英語学習に取り組むのであれば教材選びが云々言う前にまず理解しとかなきゃダメです。
英語を聞ける耳にし、ほんとの意味で英語を理解できるようにしたければ絶対に通らないとダメと言い切ってもいい。それくらいマストです。
脚韻 rhyming(ライミング)とは
Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are!
Up above the world so high,
Like a diamond in the sky.
いきなりですがこちらキラキラ星の歌詞です。
rhymeというのは韻をふむことで、言葉を意図的に同じ音で揃えて配置をすることで音楽的な心地よさを生み出します。
こちらはどこでrhymingされているかわかるでしょうか?まずは改行位置に注目。
わかりやすいように強調してみますね
Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are!
Up above the world so high,
Like a diamond in the sky.
arとare、ighとy。
cat/mat/hatなどはatで母音と子音、文字も音も一緒で完全に韻を踏んでいるわかりやすい例ですが、rhymeは字が違っても音が同じであればOKです。
もっというと厳密には途中まで違う音だけど最終的に同じに聞こえるなら韻ってことでいいよってことになってます。
この例のように後ろが同じ音で揃っているのを脚韻 Rhymingと言います。
詩、歌の歌詞、絵本などでよく使われています。
意識してみるとあれもこれも韻を踏んでるー!っていう発見がいっぱいあるはず。
頭韻 アリタレーション Aliterationとは
rhymingが最後の音で揃えることなら、その逆で頭を揃える韻のことを頭韻 Aliterationと呼びます。
マザーグースのPeter Piperが有名ですね。
Peter Piper picked
a peck of pickled peppers.A peck of pickled peppers
Peter Piper picked.If Peter Piper picked
a peck of pickled peppers,
Where’s the peck of pickled peppers
Peter Piper picked?
Pの音で頭韻が踏まれています。
こんな風に頭韻を踏んだ早口言葉が多く存在し、子供達の遊びの中で使われています。
また脚韻に比べて韻を作りやすく理解もしやすいので、子供達に最初に単語の中の共通の音を認識させる手法として使われています。
頭韻をしているととても印象に残りやすいのでキャラクター名、店名、キャッチコピーなどによく使われています。
例えば
Mickey Mouse
Donald Duck
ディズニーキャラもこの通り
Dunkin Donuts
有名なドーナツ屋さんチェーンですね。
Intel Inside
こちらは半導体のintel社のキャッチコピーでCMでもおなじみですね。
日本語バーションは「インテル、入ってる」で脚韻になっているという素晴らしいお手本。
日本語は~します/~しません、のように最後の数音で意味が真逆になったりしますので、語の後方を聞くことに注意を払っている言語。なので脚韻はまだしも頭韻には気づきにくいといわれています。
rhymeは奥深い
rhymeを分類すると完全に音が同じ完全韻(パーフェクト・ライム)、何となく似てる類似韻(ファミリー・ライム)、不完全韻 などなど細かく分類されていて、奥が深くまだ私もすべてを完全には理解しきれていません。
例えばvineとrhyme。
全然違うような気がしますが韻を踏んでいます。最初の子音は違うけど2番目の母音iが同じ、最後のnとmは口を閉じて発音する類似グループの音であるというファミリーライムなのだそうです。
また韻の位置については頭韻、脚韻の他、文の中間でも韻をふむこともあり、場所を問わず類似音を重ねる(類韻もしくは半諧音 assonanceといいます)場合もあります。
最初のきらきら星の歌詞には隠されたライムがまだあります。
というかむしろライムの塊のような綺麗な歌詞ですね。
Twinkle, twinkle, little star,
How I wonder what you are!
Up above the world so high,
Like a diamond in the sky.
歌う時にどこにアクセントを置いているか思い出しながら韻を探してみてくださいね。
ライム初心者は最初はなかなか気づけないこともあるかと思いますが、なんかリズムがこぎみいいなとか、記憶によく残るなとか、気になる物があればそこに韻が使われていないかを分析してみるといいかと思います。
子供向けの英語絵本の中で何でこの難しい単語を使ってるんだろうと思ったら韻をふむためか、なんてこともよくあります。
韻に気づくためには声に出して音読してみることが一番です。
表層の文の意味だけではない文章の美しさ、どうしてその単語が選ばれそこに配置されているのか、そういうことにも気づけるようになってきます。
フロウ(歌い方によって)韻が踏めるようになる
音楽の中で韻をふむためには歌う際の音の強弱、イントネーション、テンポなども揃える(フロウというらしいです)必要があります。
本来は韻を踏でいないものもテンポやアクセントなど言い方ひとつで韻になったりします。
たとえばOrangeは完全韻になる語を探すのが難しい単語として有名なのですが、Hip popアーティストのエミネムはO-o-ringeのようにばらして発音することでorange juiceとstorage booth、foreign toolsで韻を踏んでいます。
これは歌詞の文字だけ追っていても韻に気づけないケースがあるという事を意味します。
rhymeの歴史と音楽、日本での理解は低く
何となくでいいので韻についてわかってもらえましたか?
このrhymeですが英語が英語になる以前の言語からすでに存在していたと言われており、言語の祖先を同じくする西洋言語圏には広く広まっています。
一方日本ではどうだったかというと中国の漢詩にも韻がありますので、その影響を受けた日本で日本人によって作られた漢詩はそのお作法にのっとってやはり韻を踏んでいます。とはいえご存知の通り読むときはレ点などをふって読む順番を変え、訓読みにするので音の韻律はさっぱりなくなってしまいます。
和歌に関しては韻を踏んでいる歌があるにはあったのですが、あまり一般的ではなく、掛詞(かけことば)といって同じ音に別の意味を2重にも3重にももたせるといったダブルミーニングが主流で韻がなかったといわれています。
「日本風の韻は古代からあったよ。でも一回廃れ、そしてHip popをきっかけによみがえってきたんじゃないか?」
・・・と私は思っています。その話は下記リンク先記事にまとめましたので日本語ライムってどんな感じか含めて気になる人はどうぞ
米津玄師さんのフラミンゴで日本語ライムを説明するよ
その後日本では近代に入ってから西洋の詩をまねて押韻を試みた詩人たちがいたのですが一般化はしませんでした。
これはおそらくその時代、今のようにに音で伝えるメディアがなく文書による発表だったからだといわれています。
しかし音声メディアが発達してきたころには、西洋のまねっこをしている日本の音楽業界でも当然音楽は入ってきたのですが、音声による韻律までは聞けずに楽曲だけが模倣されていきます。
Hip hopすら最初期はライムに注目されてなかったらしいのですが、海外へ留学していた若者から日本語歌詞でのHip popライムを試みはじめることになります。
音楽のHip hopを通じ西洋的なライムが入ってきてからしばらくは掛詞的なラップだったのが、日本の音楽シーンでもフロウ(歌い方)と子音・母音認識による硬い日本語ライムがしっかり確立されるようになってきました。その後再度掛詞文化ともミックスされた独自の文化になり、現在ではHip hop以外のジャンルでもライムがみられるように。現在日本で正確にRhymeが何かを理解し使いこなしているのは実はミュージシャンなのではという状況です。
まとめ ライムを理解したいなら音楽聴こう
そもそも古代からさまざまな言語で詩というのは平たんに読まれたわけではなく抑揚をつけて歌われたもの。
日本では漢詩で韻を習っているせいか文字の文化というイメージがとても強いのですが文字ではなく音、つまり耳をから聞いて認識するものであり昔から音楽ととても親和性が高いのです。
Rhymeは音です。
そして文章中の単語選びにもとても重要な鍵になっています。
このRhymeの教育が日本の学校の英語教育現場ですっぽりと抜けているのはどう考えても相当やばい・・・。
音の感覚に関しては識字前の方がむしろ先入観なく理解できるかもしれません。
小さいころからHIP HOPを聞けとはいわないので、とりあえずMother Goose(Nursery Rhymes)は聞かせときましょうよ。
ゆるく英語育児に取り組んでいるわが家。 幼少期のかけ流しとして定番なのがマザーグースはじめ幼児向けの童謡Nursery …
こどものRhyme教育に参考になりそうな本
この本のタイトルちょっと誤解されそう。
ライミングはフォニックスが教育現場に取り入れられるはるか以前から存在するもので、現在は子供の言語学習の初期でフォニックスと併用されています。
日本では割とごっちゃにされてることが多いのですが、ライミングはフォニックスとは別物ですよ。
フォニックスって何って方はこちらを。
参考:Phonicsについてのまとめーアナリティック・フォニックスとシンセティック・フォニックス
こちらはphonemic awarenessという音素認識のことを知りたくて購入した本なのですが、半分くらいがライミングについて書かれています。
それくらい英語耳をつくるにはライミングが大事ってことなんでしょうけど、子供達が遊びの中でどうやってライミングをとりいれているかという具体例が色々書かれていて面白いです。
phonemic awarenessについてはこちらにまとめました
先日ワールドワイドキッズに追加されたフォニックス教材のレビューをしたのですが、フォニックスというよりフォノロジカルアウェ…
韻を踏んだ絵本として有名なもの
Dr. Seussシリーズ
Dr. Seussは韻を踏んだ本をたくさん出しています。
ただかなり強引な韻というか文章としてはナンセンスさがあふれるので、言葉の意味だけを追うと英語圏でなんでこんな絵本が支持されているのかわからないものナンバーワンだと思います。
これに収録されているHat in catとかはかなり初心者向きですがFox in socksとかは鬼畜ですね。
ネイティブでも舌噛みそうなフレーズが多くて、私も読み聞かせとして読んでみたことがあるのですがほっぺたつりそうでした。
Each Peach Pear Plum
正統派というかお手本的存在。
マザーグースでのおなじみの登場人物もでてきますが、ライムとか関係なくもの探し絵本としても楽しい本。
マザーグースの歌の知識があるとさらに楽しめます。
解説記事:英語絵本Each Peach Pear Plumを楽しむための童話や英語歌の知識
Goodnight Moon
子供が寝る前の読み聞かせとして定番な絵本。
子音が無声音の吐息のようなとても静かなライムが多用されていて、これは読んでて眠くなるよね。
気分の上がるライムしか知らないって人はぜひ、眠くなる優しいライムを味わってみて欲しい。
Rhyming辞典
学校で出るRhymingの宿題をこなすために子供達用のRhyming Dictionaryという韻を踏んでいる語を調べるための辞書があります。
最近だと電子辞書版を利用したりウェブサイトで調べる時代になってきたみたいですが。
Rhymingのワークシートなんかもウェブでダウンロードできる時代ですしね。
日本語ライムのことやちらっとだけ触れた類韻について詳しく知りたい方はこちらの記事へ